”リクルートの すごい構“創"力”(著者:杉田 浩章)
リクルートってどんな企業?という問いには、”AISEASの『Search』を習慣的にしない市場セグメントに向けたアナログな事業会社”という印象を持っている。デジタルな分野で存在感を見せたのは、スタディサプリの創業とindeedの買収、という記憶ぐらい。
読んでいるときは「そういうことがあったんだ」という裏側も見れて、一気に読めた。だが、これを実践に直ぐつなげていかねばならないと思うと、難易度はそれなりに有るものと思う。
一通りふりかえって、自分の仕事に惹き付けて考える。
リクルートの「不」とは、下記のとおり。
一点目は新規性、二点目は競争の原理における合理性、三点目は価値を感じるターゲットとの付き合い方、と置き換えようか。
リクルート「らしさ」には、下記の三点が挙げられている
リボン図の中のぐるぐる図でマネタイズ設計する、その道程を見せる。KPIを模索する際の条件として「環境などの外部要因に左右されず、営業現場の努力が反映されるもの」「2~5日で効果が検証できるもの」という2点を挙げられていたのは、正にその通りだと思う。(しかし、これってIT系ならば当たり前なんじゃないか?とは思う)
ゼクシィのKPIの話では、何が価値KPIなのか?を考える文脈をサラッと書いてあってここをもっと深く聴きたいと思った。
なお、リクルート流の”良いKPI”の条件は下記のとおり。
【ステージ1】「0→1」 世の中の不をアイデアへ
- 誰もが目をつけていなかったものか
- 既存の産業構造を変えるほどの大きなものか
- 収益につながるものか
一点目は新規性、二点目は競争の原理における合理性、三点目は価値を感じるターゲットとの付き合い方、と置き換えようか。
リクルート「らしさ」には、下記の三点が挙げられている
- 百億円以上の市場規模を占められる事業がどうか
- ユニークかどうか
- 志(あるべき社会の姿とのGAPとして、真に解決すべき「不」が存在しているかどうか)
これだけの条件が揃わない限り、続かない事業になってしまう、ということだ。
【ステージ2】「1→10」前半 勝ち筋を見つける
リボン図の中のぐるぐる図でマネタイズ設計する、その道程を見せる。KPIを模索する際の条件として「環境などの外部要因に左右されず、営業現場の努力が反映されるもの」「2~5日で効果が検証できるもの」という2点を挙げられていたのは、正にその通りだと思う。(しかし、これってIT系ならば当たり前なんじゃないか?とは思う)
ゼクシィのKPIの話では、何が価値KPIなのか?を考える文脈をサラッと書いてあってここをもっと深く聴きたいと思った。
初め、資料請求のはがきの戻りをKPIとしていたのを、ブライダルフェアの申し込み数・来場者数をKPIにすることにシフトした話の「それまで」と「それから」が気になった。ゼクシィは、Webという情報接点が広まった今現在もこのKPIを追っているのだろうか?というところが、特に。
なお、リクルート流の”良いKPI”の条件は下記のとおり。
- 整合性(ロジックが通っているかどうか)
- 安定性(検証しやすいかどうか)
- 単純性(指標が少ないかどうか/できれば一つに絞る)
パーチェスファネルで考えた時、「ここまで来たら歩留りは高い」という段階の一歩手前にKPIを置くと良いのではないだろうか(ゼクシィの”ブライダルフェアの申し込み数・来場者数”というKPIから類推するに)。
価値KPIとは、検討段階に入った顧客の状態の前後を現すものであり、かつ成約に至る割合を伸ばせる余地のある段階が望ましいのだと思う。
【ステージ3】「1→10」後半 爆発的な拡大再生産
ぐるぐる図で聴かれる質問とは、下記のとおり。
「お客様は、なぜ買ってくれたの?」
「その納品内容で、お客様の不は解消できるの?」
「あと、何が足りていれば買ってくれたの?」
「どうすればもっと提供価値を高められる?」
「同じ価値を求めているお客様は、もっと他にもいるのでは?」
スタディサプリは、予備校講師との接点で得られる情報そのものが高校教師の価値になっていた。そこで、学校向けの到達度テストや学習管理システムを導入することで学校指導の効率化を図った(自宅学習での学生の「不」→学校教師の指導方法の「不」への領域の拡大)。
これは、新規ターゲットへの展開ではなく、ターゲットの拡大・成長と見るべきものではないだろうか。何故なら、それまでの情報資産を活かすことができる。ただの独立した市場への多角化戦略ではなく、双方の市場に影響を及ぼす価値があったのだと思うし、それが事業の戦略として採用された理由のひとつなのだろう。
「お客様は、なぜ買ってくれたの?」
「その納品内容で、お客様の不は解消できるの?」
「あと、何が足りていれば買ってくれたの?」
「どうすればもっと提供価値を高められる?」
「同じ価値を求めているお客様は、もっと他にもいるのでは?」
スタディサプリは、予備校講師との接点で得られる情報そのものが高校教師の価値になっていた。そこで、学校向けの到達度テストや学習管理システムを導入することで学校指導の効率化を図った(自宅学習での学生の「不」→学校教師の指導方法の「不」への領域の拡大)。
これは、新規ターゲットへの展開ではなく、ターゲットの拡大・成長と見るべきものではないだろうか。何故なら、それまでの情報資産を活かすことができる。ただの独立した市場への多角化戦略ではなく、双方の市場に影響を及ぼす価値があったのだと思うし、それが事業の戦略として採用された理由のひとつなのだろう。
スタディサプリの事例を今後に生かす
スタディサプリの事例を、もっと深堀したい。自宅学習での学生というセグメントと、学校教師というセグメント、それぞれの「不」とシナジーの内訳を考察する。
自宅学習での学生にとっては、「地域に予備校など受験向けの塾が無い」「(部活動などで)忙しい」「隙間時間を使った学習がしたい」というようなニーズがある、として考えると、下記のようなポイントがセールスポイントになる。
- コンテンツ・機能:有名な塾講師の動画(1コマ約15分)
- 情報接点:PC、スマートフォン
- コスト:月額980円
一方で、デメリットは下記のとおり。
- 質問ができない
- 添削や相談はできない
- 自立的に自習する習慣の無い者には不向き
こうしたデメリットには、自分自身の学習ペースを客観的に見てくれる、強制力のある他者の支援が必要になる。
そこで、学校教師の出番。学校教師の指導方法の「不」についても、下記のようなポイントがあるだろう。
- コンテンツ・機能:学習状況の管理
- 情報接点:DBでの学校授業以外の学習状況の把握
- コスト:上記の調査に掛かる時間・労力を省きたい
以上の内容は、既にスタディサプリを利用している生徒のそれであれば、個人情報保護の壁を同意で超えれば問題なくアクセスすることが可能になるし、学生としてはスタディサプリで分からなかった内容を学校の先生に聴く、ということもできるようになる。
ここで押さえたいのは、これまでの事業内容で得た資産が、そのまま(多少はフォーマットを整備するだろうが)新たなターゲットの資産になるということ。「誰にとって」「どういう価値なのか」を考えることを繰り返せば、幾らでもピボットは可能なのだ。
どうすれば寄附者に「寄附して良かった」と思っていただけるのか。ということを考えた時、受益者とその支援者の状況がより良くなっていく道程をリアリティと共に伝えることだと思う。言い換えると、手ざわり感・臨場感のある情景が求められる。
ファンドレイザーは、リボン図の左に『寄附者』を置き、右に『寄附して良かったという気持ち』を置くべきではないだろうか。その手段として自分たちの事業が有る、というぐらいに発想を逆にして、報告内容(事業内容・寄附の使途など≒リボンの結び目)を逆算で考えていく――というのは、頭の体操としても良いことのように思う。