”THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics―Tools―Cases―”(著:Marc Stickdorn)

本書は、サービスデザインをテーマにした書籍であるが故に、デザイン思考によって記されるべき。という、コンセプチュアルな思想の下に書かれた本である。

サービスデザインとは、コストを最小限に抑え、稀少で高価な資源を最大限に活用しながら、一定水準のサービス・パフォーマンスを実現することを目指して、人、技術、方法、手順を詳細に計画する取り組みのことだ。そこには、ユーザー中心的に考えられた、領域を横断するカスタマーエクスペリエンスのto be像が存在する。

目次は、デザイン思考を基礎編、ツール編、事例編、深考編という章立てに分けられており、それぞれに十分な理解を求められる内容となっている。抽象的な議論に終始しがちなテーマを、端的に、実践的な手法と事例を合わせまとめた功績には、すばらしいものがあると僕は思う。

尚、「これからはロジカルシンキング(または既存の経営戦略コンサルティングファーム)の時代ではなく、デザインシンキング(または新興のデザインコンサルティングファーム)の時代だ」という様な論調も見られるこのごろだが―しかし本書では、ホリスティックな(全体的な)視点や戦略マネジメント的な視点も重視しており、その中でふんだんにロジカルシンキングの重要性をも説いていることは特筆に値する。即ち、全体観を以てカスタマーエクスペリエンスを考えていくにあたって、フレームワーク思考や経営戦略/事業戦略を考えることは避けて通れない道であり、効果的なツールの一つであることを著者は主張しているのだ。

”Design solves a problem, art is expression”(デザインとは問題解決であり、アートとは自己表現である。)という詞に込められた何かを体感されたい方には、御一読をお薦めする。

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