”ビッグデータ時代襲来 顧客ロイヤルティ戦略はこう変わる(著:ラジャット・パハリア)”


筆者はFacebook初のゲームアプリを提供した企業の創始者で、その後事業内容を一新。ビッグデータ、ゲーミフィケーション事業のコンサルティングを手掛けるようになる。

ソーシャルゲーム事業を拡大していくべきか、新たなビジョンを掲げたビジネスで世界を変えるチャンスを掴もうとするか―そうした事業転換を迫られたとき、彼は「最終的には、世界を変える方に決めた」そう述懐している。とても詩的な文章表現で、当時の臨場感が伝わってくるのを感じた。

さて、筆者の提唱する「ロイヤルティ3.0」なるものは、下記のような分類をしたときのもっとも先進的な顧客ロイヤルティの容である。

  • ロイヤルティ1.0:ポイントプログラム(オフラインのポイントカード)
  • ロイヤルティ2.0:ダイレクトマーケティング(オンラインのeメール)
  • ロイヤルティ3.0:人のモチベーション、ビッグデータ、ゲーミフィケーションから成る、顧客・パートナー・従業員に積極的にビジネスに関わろうとする仕組み(エンゲージメント)と忠誠心を作り出すこと

人のモチベーションには大きく内発的・外発的モチベーションに分かれる。一般的に、内発的モチベーションはクリエイティブな作業に向き、外発的モチベーションはルーティーンな作業に向く。一点、留意しておきたいのは、内発的モチベーションは外発的モチベーションより優れているという訳ではない、という点だ。良いモチベーション・システムは両方を兼ね備えているそうだ。

前者の内発的モチベーションには、以下の5つが挙げられる。

  1. 自律性―“決める”
  2. 熟達―“上達する”
  3. 意義―“何かを変える”
  4. 前進―“達成する”
  5. 社会的交流―“つながる”

後者の外発的モチベーションには、以下の4つが挙げられる。

  1. 外的調整―誰かが、何かをするように奨励している
  2. 取り入れ的調整―行動が自我、自尊心、自負心と結びつく(ex.ジムに通う、など)
  3. 同一化調整―特定のゴールや規則を、意識して個人的に大切なものとする(ex.宗教的な行動、など)
  4. 統合的調整―規則や行動を、完全に自分の中で消化している状態。

そして、これらのモチベーションの理解を、クオンティファイド・セルフ(自己の定量化)というコンセプトに基づくユーザーの定量的なデータ(≒ビッグデータ)によって深めつつ、ユーザーとのコミュニケーションの中にゲーミフィケーションという名の潤滑油を差し込んでいく、という訳だ。下記が、そのゲーミフィケーションの中心的な10の手法だ。

  1. 迅速なフィードバック―活動に対し、速やかなフィードバックや反応を得られる
  2. 透明性―(自分を含めて)皆がどこにいるのか、すぐに簡単に見られる
  3. ゴール―短期的および長期的なゴールがある
  4. バッジ―達成の証拠を示す
  5. レベルアップ―コミュニティの中で、ステータスを得られる
  6. オンボーディング―参加型の、説得力のある方法で学べる
  7. 競争―他者とどれだけうまく競えているかが分かる
  8. 協力―他者と一緒にゴールを目指す
  9. コミュニティ―コミュニティ全体が何をしているのか見られる(コミュニティ側も皆が何をしているのか見られる)。
  10. ポイント―達成に対し、手触り感のある計測可能な証拠を得られる
ポイントは、「ゲーミフィケーションはロイヤルティ育成の手段であり、中心ではない」「中心にあるのは、ビジネスそのもの」という思想を理解しておくことだろう。

尚、最後の章で、ゲーミフィケーションの実践編が書かれている。丁寧に具体的なステップで説明がまとまっているので、これを読むだけでも本書を購入する価値はあると思われる。

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