新しいPJTを創ることにした~PatientsLikeMeの小児医療版~

きっかけは、「小児医療におけるピアサポートって、なんなんだろう?」という問いを持った瞬間。あるときPatientsLikeMeを見ていて、「同じ様に、自分と同様の疾患を持つ人とのつながりを助けるSNSは数あれど、なかなか現場で使われるような浸透度にはなっていない(少なくとも、自分のいる現場では)」ことに気付いた。

海外・国内における医療向けソーシャルメディアの現状

海外では、PatientsLikeMeが2006年3月に公開されてから数多くのソーシャルメディアが立ち上がっており、がんや生活習慣病など疾患・病態ごとのコミュニティ運営に特化したものも立ち上がってきている。一方、国内では比較的まだ下火で、志あるNPO・NGO、患者会の方々の自助努力によって疾患や地域ごとに広がって来ているものの、欧米のそれほどには一般的なコミュニケーションとはなっていないように見える。

また、患者・家族会については、昨今の情報化についていけていない団体も少なくなく。そもそも医療という現場自体IT化の遅れた現場であるということもあって、患者・家族会も同様に経済面・技術面がハードルとなっており、未だWebを介したコミュニティは不足しているのが現状だ。

目指す世界観は、ちょっとした話のしたい人でも安心して話せる雰囲気

そこで、自分なりに考えたのが「医療施設」という切り口・軸。普通、患者会などは「疾患/症状」で繋がることが一般的だが、それよりも「医療施設」つまり”同じ病院にかかったことのあるひと”との繋がりを第一に考えよう、といい発想を持った。

もし自分が当事者だとしたら、”同じ病気にかかったひとと繋がりたい”というよりは”同じ病院にかかったことのあるひとと繋がりたい”と思うだろう、という洞察があったためだ。

小児総合医療施設で入院する子ども・ご家族には、下記のようなニーズが有るはず。

  • 自分と同じ施設/疾患で療養している/していた人に話を聞いてみたい
  • 医療者からの指摘がほんとうに自分に合っているかどうかを確認したい
  • 自分の気持ちを聴いていてもらいたい
  • 自分の親しい人のための情報やサポートする方法を見付けたい

そして、小児総合医療施設のSW・患者会・家族会・支援団体には、下記のようなニーズが有るはずだ。

  • 教えたい
  • 自分の経験を社会に活かしたい
  • できるうる限り、医学的/科学的根拠の確かな方向性に進んで欲しい

1、2点目には、ピアサポーターとしての想いが詰まっている。特に3点目は、おかしな民間療法にハマってしまうことや、自身の今後の治療方針の議論をさほど長引かせられない状況を避けるには大切なニーズとなる。しかし、これらのことは、このソーシャルメディアが医療施設のリソースとの共存ができていれば問題ない。

つまり、当事者同士のコミュニケーションであるピアサポートの空間に、専門家である医療者が介入する余地を持っておくことで、むしろ安心して/安全な情報交換ができるのではないか?という仮説を僕は持った訳なのだ。

昨今ニュースとして増えている医療的ケア児の当事者であっても、よくご家族が「この子、ここのNICUの卒業生なんです」というフレーズで自己紹介をしてくれることがある。「そっか、卒業生か…OB・OGのようなものだなぁ」という気付きが、そこにある。

これをビジネスに置き換えると、このような表になる。

リクルートのリボン図を踏襲して、ビジネスシステムを表現してみた

さて、一方PatientsLikeMeのケースを見ると、かなり当事者(患者・ご家族)よりのバリューを追求しているように見える(無論、これはアティテュードに過ぎない、という見方もあるだろうが)。

”当事者同士が分かち合うことそのものが価値である”という趣旨

しかし自分なら、当事者と医療者、その双方の立場を同じぐらい重んじて医療のこれからをより良いものにしていく方が良いのではないだろうか、というように考えた。

それは、ともすればネット特有の『浮遊感』が、結果として根本的な問題解決を生まぬまま時だけが過ぎ去ってしまうような事例を作り出してしまうことを回避したいということであり。対面特有の『リアリティ』『緊張感』『情報量』によって、問題解決への推進力をより発現させるよう期待するところがあるからだ。

ともすれば個人情報保護の文脈で「私の個人情報で金儲けをするのか!!」というような反発もあろうに、こうした未来志向の説明を丁寧にしているのなら、一定の納得感はあるように思う

また、彼ら(PatientsLikeMe)の収益はDBに蓄積されたユーザーのデータを定量的に分析し、そのデータを販売することとしている。”あなたのデータは、医療そのものを変える”というステートメントは、とても心強い。

本事業成功のためのCSFのリスト

では事業の成功はどういったポイントを押さえるべきか?というのが課題。特に、”魅力的なDBの設計・運用する仕組み”についてのノウハウは正直皆無。

だが、1年以内には事業化していこうと思う。まずは、その備忘録としてここに記す。

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