La La Land (監督:デイミアン・チャゼル)
ある文章を編集する機会の中でこの作品の話が出たこと、久しぶりの連休らしい連休に時間を取ることにしたので、見たいな、と思うこの作品を見た。
「人生って、こういうファンタジーが有って良いよな」という気分になった。
ハッピーエンドに向かっていくだろう物語の中で、大人になっていく主人公たちの道のりの中にある情景が、ずっと描かれる。ひとりひとりの登場人物にあるべき背景や思想の様なものを丁寧に描いているというよりは、大まかにプロットされたストーリーの中で、困難・クライマックスの瞬間にミュージカルの魔法が掛かる…ということの繰り返し。なので、抒情的な表現は少なく、展開は大雑把な紙芝居のよう。人物の内面が露わになることはさほどなく、何となくの情動の流れを視聴者として補填しているような気さえした。
で、自分も良く聴く菊地成孔さんや映画評論に長けた方々の評価も聴いてはいた。じっさいに見てみて正直、自分のレベルでも、ジャズ、というものを都合良く捉え過ぎている気がした。
この映画のテーマ曲だろう、Mia & Sebastian’s Themeは「映画音楽っぽいな」と思った。この一曲が都度流れる時、曲自体が物語の預言者的役割をして、二人を導いてゆく。この演出には、しびれた。ただし、これは全然ジャズじゃない(ジャズ、というか…曲想はショパンみたいだった)。
また、“死んでいくジャズ”をセブが救出したいと語ったジャズ。これが何かというと、車でも家でも執拗に練習しているセロニアス・モンクの Japanese Folk Songだったりする。お気に入りのジャズクラブ Lighthouse Cafe でミアに聴かせる音楽は、ソロ回しを中心とした音楽で、これはスウィングに近しい。
ジャズといっても時代背景と伝わっただろうメッセージとには、大きな差がある。もちょっと、気を遣って欲しかったな、と思うのだけれど。
ただ、最初に流れるAnother Day Of Sunの素晴らしいこと。僕は、このテーマが一気に気に入って、即Google Playでサウンドトラックを購入した。ジャズとか関係なく、映画音楽としてBGMとして、すんごく良い。作曲の構成としても、そして演奏するプレイヤーの技術のレベルの現れ方も十分に有って。こういう曲に、こうした映像作品を通じて出遭えたことに大満足だ。
幻想的な瞬間は、そうそう人生におとずれることはない。そう分かっているからこその、ファンタジーなのだと思う。