「ギフト、良いよね」
何とも暗く、錯乱の多かった中学校時代から、高校に進学したころ。環境は変わったが、引き続き、僕は独りで本を読む休憩時間をすごしており、同級生と馴染むのには時間が掛かった。
そこで読んでいたのは、飯田譲治・梓河人著の“Gift”という作品だった。記憶喪失の主人公が、その記憶の断片を探して生きる生き様を描いた小説だ。
入学して暫らく経った5月のある日、僕がいつも通りこの本を読んでいると。
「ギフト、良いよね」と話し掛けてきた子がいた。I君だった。
彼は、すごく穏やかな子で頭も良い子で、全国学力テストで一桁に入る頭脳を持っていた。けど、授業中によくバックれて、屋上でタバコを吸っている様な奴でもあった。
その内、僕らは仲良くなり、休憩中に話す間柄になった。そうして、僕は他の同級生とも話すようになった。底抜けに明るく面白い奴ばかりのクラスで、自分の居場所もできた。
9月、2学期のある日。彼は、突然学校をやめた。
しかし、その背景は全然明かされることもなく、先生方もよく分からないままだったらしい。そうこうしてる内に、何事も無かったかのように彼のいない学校生活に僕らは慣れていった。
僕が2年生に上がったころ、風の噂で「名古屋の方でホストやってるらしい」という話を聞いた。しかし、そんな話、僕にとってはどうでも良いことだった。何故なら僕は、高校卒業まで二度と彼に会えなかったから。
もし、この人生で彼に再会することがあるとしたら。僕は、「ありがとう」を伝えたい。彼に話しかけられたあの時、僕はたしかに救われた気がしたから。
そこで読んでいたのは、飯田譲治・梓河人著の“Gift”という作品だった。記憶喪失の主人公が、その記憶の断片を探して生きる生き様を描いた小説だ。
入学して暫らく経った5月のある日、僕がいつも通りこの本を読んでいると。
「ギフト、良いよね」と話し掛けてきた子がいた。I君だった。
彼は、すごく穏やかな子で頭も良い子で、全国学力テストで一桁に入る頭脳を持っていた。けど、授業中によくバックれて、屋上でタバコを吸っている様な奴でもあった。
その内、僕らは仲良くなり、休憩中に話す間柄になった。そうして、僕は他の同級生とも話すようになった。底抜けに明るく面白い奴ばかりのクラスで、自分の居場所もできた。
9月、2学期のある日。彼は、突然学校をやめた。
しかし、その背景は全然明かされることもなく、先生方もよく分からないままだったらしい。そうこうしてる内に、何事も無かったかのように彼のいない学校生活に僕らは慣れていった。
僕が2年生に上がったころ、風の噂で「名古屋の方でホストやってるらしい」という話を聞いた。しかし、そんな話、僕にとってはどうでも良いことだった。何故なら僕は、高校卒業まで二度と彼に会えなかったから。
もし、この人生で彼に再会することがあるとしたら。僕は、「ありがとう」を伝えたい。彼に話しかけられたあの時、僕はたしかに救われた気がしたから。