“正しい判断は、最初の3秒で決まる 投資プロフェッショナルが実践する直感力を磨く習慣”(著:慎 泰俊)

最近、この本を再読した。著者は、慎 泰俊。プロフィールは下記のとおり。
1981年東京生まれ。朝鮮大学校政治経済学部法律学科卒,早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。モルガン・スタンレー・キャピタルを経て,現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。 仕事の傍ら,2007年にNPOであるLiving in Peaceを設立し,カンボジアやベトナムなどで貧困層の金融へのアクセスを拡大するために日本初の「マイクロファイナンスファンド」を企画。国内では,児童養護施設向けの寄付プログラム「チャンスメーカー」の実施および子ども向けのキャリアセッションを行う。

最近だと、講談社が運営するWebメディア・現代ビジネスで“プロフェッショナルの作法”という対談企画を絶賛連載中です(因みに、第一回の田原総一郎さんとの企画では「ジャーナリズム」という仕事にプライドを持つ彼の矜持が丁寧に書かれていて、凄く面白いです。ぜひご一読を)。

さて、本書のレビューに入ろう。何よりも僕がまず第一に言いたいのは、そのタイトルからは想像できないほどに内容は学術的で実践的であるという事実だ。プロフェッショナルとしてのキャリアに憧れ目指す、すべての人に読んでもらいたい内容になっている。

僕の気づき・学びをまとめると、直観的な思考を磨き上げるために必要な営みとは、下記のようなポイントに集約される。

  • 倫理に基づいた信念の言語化
  • 「何としても成果を出す」という信念の内面化
  • 信念・経験の投影する直観に基づいた適切な仮説の設定
  • 経験に基づいた仮説の検証(ただし、必要に応じて専門家・他者にヒヤリングすること)
  • これらを支持する組織的なシステム・環境の整備

特に、『経験に基づいた仮説の検証』―ここで行われる仮説の検証に注意すべきだ。何故なら、立てた仮説の質の度合いによっては、本人が全く想定していなかったような結果を解釈しきれないケースがあるからだ。

そのとき、『必要に応じて専門家・他者にヒヤリングすること』の効力が発揮されるのだと考える。自分一人の頭で解決できない問題は、他の人の頭を借りるべきだろう。そして、その頭は自分のそれよりも発想豊かで経験豊富で、賢いものであるべきなのだろう。

何でもかんでも仮説・検証のプロセスを自分一人でやって自己完結するのは、ただ自分自身を過信しているだけだ。常に、他者からのフィードバックを真摯に受け止めて、自分の考えを見直す。そんな、丁寧な仕事の姿勢を忘れるべきではない。

最後に、本書のあとがきを。この文章に、少しでも共感するところのある人には、ぜひ読んで欲しい。自分の中の信念を見つめ直し、自分がこの一生で何を成し遂げるべきなのかを自問自答する、きっかけになるだろうから。

この本の主張は、「初期においては他人から認められもしない直感と信念が世界を前に進める」ということです。 
この主張の根底にあるのは、目に見えるものや論理的に通じるものしか許さない「知性」に対する異議申立てです。私が普段身を置いているビジネスの世界では、論理が圧倒的に強い力を持っています。特に、技術が進歩するにつれて、こういった論理的な物言いがさらに勢力を強めているように思います。 
ですが、私がプライベート・エクイティの仕事や自分で興した事業を通じて得たのは、目に見える論理の鎖だけをたどっても、結局何にも行き着かないという確信でした。本当の論理、世界を前に進める論理は、おそらく、目に見える論理を飛び越えたところに存在しているのだと思います。真理にたどり着き、世界を前に進めるためには、私たちは時に勇気をもって飛躍しなければいけません。それがたとえ、一部の「賢い人々」から笑われるとしても。 
体験に根付いた直感と信念があってこそ、世界は前に進みます。「出来るかどうかじゃない、やるんだよ」と、それが出来ない100の理由をなぎ倒しながら前進する人々こそ世界を進歩させるのだと、私は強く主張したいのです。 
私のような若造が直感と信念について書くのはおこがましいかもしれません。
確かに、私が何か大きな事業を成し遂げ「この本を書く資格」ができた後に、直感と信念というテーマで本を書いたら、それはより大きな説得力を有するでしょう。 
でも、それは、この本のテーマからすればおかしいと思うのです。というのも、この本で主張しているのは、「まだ定かになっていないもの、周囲から当初は受け入れられもしないもの、初期においては不完全なものこそが世界を変えるのだ」ということだからです。私が将来(運良く)事業に成功してからこのテーマを書くのは、どことなくあと出しジャンケンなのではないかと思います。成功したらその要因について何だって言えます。しかし、それが再現性のある成功要因である保証はほとんど存在しないのです。 
また、私はどうしてもこの本を、今、書きたかったのです。隼が飛びたいように、チーターが走りたいように、私はこれを書きたかったのです。 
私はこれから起業します。すべての人に必要なお金が届く世界をつくり、より多くの人が貧困から抜け出す機会を生み出すために、21世紀における世界銀行の代わりとなる民間金融機関をつくろうと思います。まずは、途上国でプライベート・エクイティ投資を行い、利益の一部が子どもに寄付される仕組みをつくります。 
ファンド起業は素人には出来ないので、最初に経験を積む必要がありました。だから、自分が無職だった23歳の頃から「まずは外資系の金融機関に入り、プライベート・エクイティ・ファンドで働き、2015年には自分でファンドをつくるのだ」と、ずっと周囲に話し続けてきました。私を昔から知っている人は、覚えてくれていると思います。 
私にはそれができるという確信と決意がありましたが、周囲の反応は冷ややかなものでした。外資系投資銀行に内定したわけでもない、単なる無職の人間が言うのだから当然といえば当然でしょう。「夢があっていいねえ」と失笑する人も、「雲をつかむような話をやめて、現実を見たらどうだ」と、「大人の分別」をもって諭してくれる人もいましたが、私は自分の根拠のない確信を大切にしてきました。 
私のような経験をした人、これから経験する人は多いはずです。熱い思いが世間の冷たい現実に接しても冷めないよう、私自身のためにも、私とおなじ境遇にいる人のためにも、今こそ「言葉にしきれない確信」を可能な限り言葉にしたいと思いました。この本がその目的をある程度でも果たすことができたら、著者冥利に尽きます。
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