“こころをつなぐ小児医療”(著:満留明久)

著者のプロフィールは下記の通り。ずっと小児医療を向き合ってこられた中で、後進の育成に資する執筆活動をしたり、社会養護の分野でも里親のためのコミュニティ「子どもの村福岡」を立ち上げたり―と、非常に社会性あふれる医師の一人だ。
福岡大学名誉教授。国際医療福祉大学大学院教授。国際医療福祉学院学院長。医学博士。教育と医学の会理事。専門は小児科・小児神経学。
1939年鹿児島県生まれ。1965年九州大学医学部卒業。1970年九州大学病院小児科助手。1975年福岡大学医学部へ。同大学医学部講師、助教授を経て小児科教授。1997年福岡大学病院副病院長、2001年同大学医学部長。2006年3月福岡大学退職、同年4月より現職。2006年からNPO法人子どもの村福岡理事長。
本書は、後進の育成を目的として学内広報誌で寄稿した文章をまとめた一冊である。ひとつひとつの文章は短いものの、しかしその中でふれられる医療の現場の人間ドラマには考えさせられるものが多い。

印象に残った内容をピックアップする。“患者さんは何を求めているか?”をまとめると、下記の通り。

  • 苦痛を取り除いてほしい
  • 障がいを除いてほしい
  • 命を救ってほしい
  • 救急、救命の願い
  • こころを支えてほしい
  • 行動を変えてほしい(行動変容)
  • 子どもとして成長させ、発展させ大人になるために必要なこと(子どものニーズ)を満たしてほしい

また、下記の“障害を持つ子どもの親の心理的反応”は、末期・終末患者の心理状態を研究したキュプラー・ロスの死ぬ瞬間―死とその過程について (中公文庫)をうけて小児医療の研究者が改変したもの。この辺りの想像力は今後大切になってくるだろうから、忘れぬように、ここに記す。

  1. 第一期:ショック―この世の終わり、崩れ落ちるような感情の反応、感覚脱力感、無力感、よく泣く、どうしようもない気持ち・逃げ出したい衝動
  2. 第ニ期:否認・否定―「自分の子がどうして、なぜ?」「そんなはずがない!」doctor shopping、宗教・慈善事業への関心
  3. 第三期:悲哀と怒り、不安―怒りっぽくなる(誰にでも、特に医療従事者への攻撃)、子どもが/夫が/自分自身が憎い、自分の責任、子どもに愛着を感じることに躊躇う
  4. 第四期:適応―不安と情動の不安定さが薄れ、立場を理解・子どもを受け入れる、世話ができる、子どもと同一化
  5. 第五期:再起―子どもの問題に対する責任に対処、中長期的・積極的な受け入れ、両親の相互の支え合い

因みに、僕は自分が周産期・小児医療(まとめて成育医療と言う)の世界に入ったこと、Living in Peace教育PJTで児童養護施設支援の仕事をしていることから、小児科の医師で里親支援をされている著者にシンパシーを感じて、ファンレターを贈りました。

すると、さっそくお返事を戴き。有り難い、と思うと同時に、自分の仕事における信念を見つめ直す良い機会になりました。


この国の小児医療のリーダーとしての仕事を、全うしたいと思います。

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